実録!何故、K氏は1年間も捕らぬ狸の皮算用をしてしまったのか~下一站幸福に魅せられた女に迫る~後編

過去記事整理中。2010年9月に書いたものです。パート1はこちら。

「執着」それは時にとてつもない力を生み出す。

実録!何故、K氏は1年間も捕らぬ狸の皮算用をしてしまったのか~下一站幸福に魅せられた女に迫る~後編

・インタビュー 後編 > 金鐘獎に関しての素直な気持ち。 彼らの今後に期待するもの。

「確信していた」

記 さて・・・今回もっとも聞きたかった「金鐘獎」当局の動きについてですが・・・Kさんは「下一站幸福」事件が捜査対象になる。そう思っていたわけですよね?

K ・・ええその通りです。ほぼ1年間そのように思っていました。実際は捜査対象にはなりませんでしたが(苦笑)

記 何故対象になると思ったんでしょうか?

K お恥ずかしながら、実はコレといった根拠はなかったんです。ただなんとなく捜査対象になるだろうと思っていました。「確信していた」そういう表現の方が正しいかもしれません。・・・まぁ結果1年間も捕らぬ狸の皮算用をやってしまったわけです(笑)

記 コレといった根拠はない、しかし「確信」していた・・・というのはおもしろい話ですね。

K ええ(笑) ただ今回当局が動かなかったことに疑問を呈している人がいるというのは明確な理由はなくてもそういう期待をさせる事件だったということなんだと思います。

記 なるほど。何かがあの事件にはあったということですね。

K そうです。たぶん「素敵」だったからというのが一番近い理由だとは思います。それ以外には過去のノミネートリストとかをみて「下一站幸福のクオリティー」ならノミネートはされるだろうと思っていました。受賞の話とは違いますよ!ノミネートの話です。例えば命中にしろ敗犬にしろ作品賞、主演女優賞等、主要な賞はノミネートされてましたよね? そういう過去の雰囲気も頭にあったのでノミネート段階ではいくつかは対象になるだろうとは・・・

記 過去のデータは今年度にはまったく関係ないとはいえ、「予測」を立てる上では参考にはなりますよね。

K ええそうです。受験の傾向と対策みたいなもので過去数年のデータから見てもノミネートは確実かと皮算用してしまいました(苦笑) それに土台があってパーツを選ぶ・・・そういう事件でしたしね。

記 土台である作品があってそのうえに役者がいるという構図ですね。

K はい。そうです。 役者ありき、役者が土台になってその上に作品がある。そういう作品もある中で下一站幸福事件はまず作品ありきのものだったとは思います。前述した組み合わせの謎につながる部分ですが・・・。また、主要キャストにとってこの作品は一つのターニングポイントになる作品だと思うんです。そしてそういう「ターニングポイント」になる作品というのは賞レースでは割と勝率が高いかとは思ってたんです。正直なところ・・・。

記 しかし個人賞どころか作品賞も対象にはならなかった・・・・当日Kさんはどのように思いましたか?

K お恥ずかしながらかなりパニックになってしまいました(笑)まったく予想していない展開でしたから・・・。次の日は早朝出勤だったのですがほとんど眠ることが出来ず当日はエライ目に会いましたね(笑) 仕事も随分ヘマしましたし・・・

記 眠れなかった理由というのはどのような感情によってそうなってしまったんでしょうか?

K 当日はそれを「怒り」だと思っていました。「こんなもん不当だ!」そう怒っていると自分では思っていました。

記 「思っていた」ということは実際はそういう感情ではなかったということですか?

K ええ。そうです。 時間が経てば経つ程自分のパニックの原因は「怒り」ではないと気付いたんです。

記 では、実際はどんな感情だったんでしょうか?

K もっとも近い感情としては「寂しい」でしょうか。そして今回の一件で随分、心をすり減らしてしまったように思います。

記 「寂しい」?

K そうです。「寂しい」という感情です。 私は下一站幸福事件が、導演が、安以軒が、ヴァネスが・・・偉い賞にノミネートされて栄誉を得る。そういう物を見たかったわけではないんです。自分の大好きな作品が偉い賞に評価してもらえる・・・そういう物を見たかったわけではないです。だから究極的に言えば、台湾のエミー賞を取ろうが取らまいがこの作品が私にとって2009年度NO1事件であることには変わりはない。だから栄誉とか名誉とかそういう点についてはそこまでの拘りはないです。もちろん応援している安以軒が主演女優賞なんか取ってしまった日には狂ったように喜びますがね(笑)・・・・大好きな人が栄誉を得るというのはとってもうれしいことですから。

記 Kさんの今のお話ですと、金鐘獎に対する思い入れはないように聞こえる・・・しかしパニックを起こし寂しいとも思う。そして心をすり減らす・・・・それはどういうことなんでしょうか?

K 単純なことです金鐘獎が与えてくれるのは栄誉や名誉だけではないということです。つまりは「賞」というものが与えてくれる「幸福」を下一站幸福チームが味わえなかったことが本当に寂しいのです。 ファンというのは自分の好きな人や好きなものに心を馳せる生き物です。だから彼らが栄誉や名誉以外に沢山の幸福を味わう姿を必ず想像するはずです・・・

記 それはどういったものでしょうか?

K 本当に沢山あると思います。 例えばノミネートされればご両親や兄弟、友人達がとっても喜ぶでしょう。自分の娘や息子がノミネートされればご両親は涙を流すかもしれない。恐らく自分の家族が自分の事で喜んでいる姿を見るのはとっても幸せなことだと思います。 それからノミネートされた人間としてアワードに参加するという経験が今後の彼らにもたらす影響も大きいでしょうね。もちろん自分という商品の価値を上げるという意味においてもですが・・・それ以上に優れた表現者達と肩を並べて参加するという経験がもたらすものは大きいと思います。

記 つまりは人間として糧になるものを「得る」姿を見たかった。そういうことですか。

K 綺麗に言えばそういうことですね(笑) でもそんな大げさなものではなくて・・・。例えば「ノミネートされたことをママに報告したらとっても喜んでくれたの~ホントにうれしい」・・・そういう微博での呟きを見るとか・・・。下一站幸福チームで作品へ与えられた栄誉を喜ぶとか・・・。 レッドカーペッドでドキドキしながら歩く姿を見るとか・・・これはプレゼンターとノミネート者では全然纏う雰囲気が違いますからね・・・。 そういう物を見たかったですね・・・。彼らが喜んでいる姿が見たかっただけです。 発表後のレイニーのブログを読んでとっても幸せな気分になりましたからね~・・・家族で喜びを分かち合ったり、共演者と喜びをわかちあったり・・・そういうのを見るのがファンは好きなんですよ・・・。ノミネートされればインタビューも面白くなったでしょうし・・・。

記 寂しいですか?

K 本当に寂しいです(笑) チーム下一站幸福が盛り上がっている姿を見たかったですからね・・・・作品そのものにしても、導演も出演者も・・そういう興奮が与えられる価値のある物/人であると確信しています。・・・確信していたからパニックになったんでしょう(苦笑)

記 そして心をすり減らしたわけですか?

K・・・・私はもう選考について云々言うつもりはありませんし、そもそも他作品と比べるという考え自体もありません。ノミネートされた作品でみている作品は・・・軽く見ているのも含めても3作品という情報弱者ぶりですしね(苦笑) だから不当なのかそうではないのか量る材料もありません・・・。ただ今回下一站幸福がこういう形になってしまったことでそれなりに反応がありましたよね?

記 ええ。ありましてね。

K そしてその火消しをするのはチーム下一站幸福になってしまうんですよね・・・。ビアンカと安以軒は仲良しですから今回の一件で意地悪な記事を書かれたりしてますし・・・・。安以軒は人の栄誉を喜べる人なんです!それがわけのわからないことの火消しにまわることになるなんて・・・・あんまりです・・・。 これからも色々な質問をされて、色々と気を使わなければならないでしょうね・・・。 そういうことを考えるとほんとに心がすり減ってしまいます。 「選ばれるべきだ!不当だ!」っていう声も、彼らにとって必ずしも追い風にならないこともあります・・・・。ファンががっかりしている姿を見るのは寂しいでしょうしね・・・・。 そういうことを考えて、くたびれましたね今回のことでは大分。

記 本来は楽しみにしていたことがこういう風になってしまうと金鐘獎に対する思いも変わってしまいますか?

K 正直今は複雑なところは無きにしもあらずですが・・・たぶん今後も毎年楽しみにするイベントだと思います。やっぱりアワードがもたらすものって大きいですよね。ノミネートされた人達が喜んでいるのを見るのは微笑ましいです。それに数年前、大好きな依晨が受賞した時に「あ~こんなに興奮するもんなんだな~」って思ったんです。うれしそうでしたし。 今回のアワードは私に振り向いてくれませんでしたが・・・いつかまた振り向いてくれるはずです。 チーム下一站幸福は皆才能ありますからまだまだ別の機会がありますよ!!!

記 安以軒ファンは既に金馬奨を見据えているという話も聞きましたが?

K ええ(笑) ノミネートされなかった次の日には「仕方ない次は金馬奨に期待しよう」の声が上がっていてうれしかったですねー。姐さんもたくましいですが、ファンも劣らずたくましいです(笑)

記 さて最後にチーム下一站幸福には今後何を期待しますか。

K それはズバリ、良い作品を一杯生み出してほしいです。導演はかなり才能のある人ですから今回のことをバネにもっともっと素敵な作品を世に生み出してほしいと思います。

記 今回はありがとうございました。

K こちらこそ。お話したことで随分考えがまとまりました。

・特集 2 > 光晞とヴァネス 安以軒と慕橙

ヴァネスにとっても安以軒にとっても久々の台湾ドラマとなった下一站幸福。 話題性という意味では若干の弱さがあったことであろう。ところが蓋を開けてみれば大事件である。
ここでは彼らが何故光晞に、慕橙にフィットしたのか? 独断と偏見を交えて検証する。

光晞@ヴァネスの場合

とにかくヴァネスは女性導演との相性が抜群であると思う。
鍛え上げられた肉体に高身長、積み上げてきたキャリア。しかしその表情には「少年」が潜む。
「青年」と「少年」のバランスというのは演技力云々でカバー出来るものではないところが実に難しいものである。確かに緻密に演技プランを組み立て「少年」に近づくことは出来てもそれは近づいたにすぎない。天然ものには勝てないのだ。
さて、光晞を演じたヴァネスであるが、光晞を演じる上で不可欠な「少年」要素は恐らく天然物であろう。ダンスや音楽には遊び心が必要であり、そういうものを生活の一部にしている人間はどれだけ皺を増やしても「少年/少女」を忘れない。
光晞は社会的に見れば、仕事もできる有能な弁護士である。しかし一方では慕橙に対して驚くほど視野の狭い行動を取ってしまうこともある。感情のままに怒るし、手に入れようと思えば強引なこともする。慕橙との間に気分の良いことが起こればはにかむし、気に入らないことが起こればすぐにスネる。

スマートで出来る男の側面と、すぐスネて子供っぽい一面。これをヴァネスは実に上手いこと表現出来ていると思う。
また小樂と光晞がすぐに打ち解ける描写においても「少年」要素は必要不可欠だ。「遊んであげている」と「一緒になって遊ぶ」 この雰囲気の違いで受け手の印象が大分変わってくる。小樂と一緒にいる時の光晞はとても楽しそうだし、同情心から無理して一緒にいるわけではないことは見ていればわかる。そしてそんな光晞だからこそ、小樂がすぐに彼を好きになり打ち解けていく姿が自然なのだ。

女性というのはこういうアンバランスな男性を大変好む。
頼れる男らしい男性でありつつも、若干のかわいらしさがほしいのだ。

下一站幸福の女性導演陳慧翎はそのあたりのバランスを心得ているようで上手いこと視聴者の心をくすぐっている。
天然物であったヴァネスと心得ている女性導演の力が合わさって「任光晞」が生まれた。 彼らはまたタッグを組んで新しい作品に取り組んでいるようなので新しい作品が実に楽しみである。

慕橙@安以軒の場合

安以軒は彼女の本来の性格とは異なり、控えめでか弱い役が多い。彼女のソフトな声と細い体がそういう役を引き付けるのだろうか? 一方で倚天屠龍記の趙敏にように、強くてずるがしこく芯のある女性を演じることもある。
そして下一站幸福で安以軒が演じた慕橙は、頭が良く強い意志を持ちながら、常に他人の幸せを優先し自分に対しては控えめな女性である。 つまり安以軒が今まで演じてきた控えめな女性と強い女性を合わせたような女性であるわけだ。

天才か?秀才か?そう問われれば、安以軒は秀才タイプだろう。彼女の初期作品を見てもお世辞にもセンスがいいタイプとは言えない。
シリアスなシーンもコミカルなシーンも見ていて恥ずかしくなってしまうこともしばしばだ。

ところが仙剣奇侠伝の月如で評価を得た彼女は数々の大陸作品に出演。キャリアを積み、演技力を磨いて3年振りに台湾ドラマ界に下一站幸福でカムバックする。

得意分野である両方の側面を兼ね備えた慕橙を実に「素敵」に演じてくれたとそう思う。
年齢を重ねて磨きのかかったヴィジュアル、本人の性格とはアンバランスなソフトボイス、キャリアを積んで得た余裕・・・デビューしてから積み上げてきた彼女の良さが沢山詰まった慕橙役だったように思う。
前半の女の子の面と、後半の母親の面それを違和感なく自然に演じてくれた。

本当に慕橙は素敵な女性だった。

・特集 3 >ありがとう下一站幸福

K氏とのインタビューは、夫婦二人で経営するこじんまりとした味わい深い喫茶店で行った。K氏は何か物を触っていないと落ち着かないクセがあるようでストローの空き袋をずうっと手で触っていたのが印象的だった。理由を聞くと学生時代マジックサークルに入っていたそうで、トラップやコインをいじっていたこともあって手癖が悪くなってしまったと笑っていた。
K氏に会う前、私は彼女が随分怒っているだろうと予想をたてた。白状すれば彼女の怒りを引き出してやろうという意地悪な気持ちを持って待ち合わせ場所に向かったわけである。ところが彼女は下一站幸福が彼女にとっていかに素敵な事件であるかを目を輝かせて語り続ける。そしてお読みいただいてもおわかりになるように、彼女が金鐘獎に期待していた理由にも実に些細なことであった。私は拍子抜けしたと同時に「下一站幸福事件」がK氏に、いやこの事件を愛すべき人達にとってどれだけ素敵な作品だったのかを改めて感じるに至った。下一站幸福は人を「執着」させるそういう事件であったのだ。

インタビュー後K氏は華流ショップに行くと渋谷の街に消えた。 スクランブル交差点をトボトボ歩く彼女の背中からは「下一站幸福ありがとう」 そんな言葉が聞こえた。

編集長 mos

この雑誌はノンフィクションの感情とフィクションで構成されています。

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  1. この記事を読んでると、下一站幸福に激ハマりしたあの頃を思い出します(笑)

    あおたさんのおっしゃる通り、何の期待もせず、
    安以軒という女優さんも知らず、あーヴァネスだー
    温昇豪だー←この頃彼にハマってたんです(笑)
    暇だし見るかーというところから始まって抜け出せなくなったあの頃(笑)
    幸せでした^^

    あそこまでハマれた台湾ドラマは後にも先にもないですねー
    (見たタイミングや視聴方法が良かったという理由もあるかと思いますが。)

    だからこそ、下一站幸福のタイトルについて熱く語ってるあおたさんの記事を読んで
    わたしと同じ、いや以上にこのドラマにハマってる人がいる!と感動し嬉しくなったんだと思います。

    そして、あおたさんの昔のお名前も懐かしいです^^
    ←やっと今になってすらっとあおたさんと呼べるようになりましたゞ

    今更って感じですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
    同じタイミングでまた同じ俳優であったりドラマであったり熱くなれたらいいなーと思っています。

    • posted by あおた (地球中毒筆記)

      >ilovegwさんへ

      下一站幸福をリアタイ追いしている時は本当に幸せだったなーと思います。視聴率がドンドン上がっていく感じとか、日本の台ドラファンが猛烈に盛り上がっている感じとか、全てが今考えると最高でした!!!

      安以軒とヴァネスってどうなの?と予告を見る前は思っていたのですが、予告を見た瞬間「こ、これはヤバい!!!」と思った記憶があります。

      私もあそこまでハマれた台ドラは後にも先にも無いと思います。
      それはilovegwさんが言うように、タイミングや視聴方法によるものもきっと大きいですよね!
      最近はリアタイすることがなかなかなくて、いっき見のスタイルなので、毎週毎週放送が待ち遠しくて悶え苦しむ機会がなかったりします。それはそれで寂しいなーと思ったり。

      >そして、あおたさんの昔のお名前も懐かしいです^^
      ←やっと今になってすらっとあおたさんと呼べるようになりましたゞ

      あおたを名乗って随分経つんですが、実はいまだにケイモス気分が抜けなかったりします。というか、ブログ書いてる時に普通に打っちゃうこともあったり(苦笑)凄く愛着がある名前だったなーと今になって思います。

      >今更って感じですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
      同じタイミングでまた同じ俳優であったりドラマであったり熱くなれたらいいなーと思っています。

      これからも末長くよろしくお願いします♪
      ホントに同じタイミングでハマれたりしたら楽しいですよねー。同じ熱狂を共有するって、本当に楽しいことです!安公主の新作が下一站幸福みたいにハマれるドラマだと本当に嬉しいです!!!!

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