カテキョのセンセ。(2017年・スターボード)

“ どんなに小さくても構わないから、身の回りの世界を深く愛そう”

GW-05133

能登秀美さん監督、きみと歩実さん主演の『カテキョのセンセ。』を鑑賞。

あらすじ

下半身にハンデのある今井聡は、自宅のベランダから変わらぬ風景を趣味のカメラに収めていた。彼は家族と会話もせず、数年間引きこもりの日々を過ごしている。そんなある日、彼は窓の外を通りかかった山科遥(きみと歩実)が大きく転んだ瞬間を思わずシャッターに収める。遥と目が合う聡だが逃げるように部屋の中へ。
一方、聡の父・純一は、英会話の生徒を探している遥と偶然知り合う。若く魅力的な遥を前に、下心から聡の家庭教師を依頼するも、不倫相手の朱美に怪しまれる。そんな中、今井家に授業にやって来る遥。聡に無視され、部屋に入れてもらえない。そこで遥は閉ざされたドアに向かって「あの日の写真を見せて」と声を掛ける。やがて静かにドアが開かれ、英語の授業が始まるのだった。そして次第に遥に惹かれていく聡……しかしある日、聡は彼女の秘密を知るのだった……。

感想など(ネタバレなし)

エロティックVシネマというくくりで、家庭教師と青年の個人授業という骨組みだと、大抵の人が「エロい女教師に青年が性のレッスンを受けて……」みたいな話を想像すると思うのですが、この作品はそういう予想を大きく裏切られます。

物語の根底に流れるものは『親子の再生』だったり、『自分の運命にどう立ち向かうか』だったりする。

テーマだけ並べるととっても綺麗なお話だけど綺麗ごとで終わらせない深みがあって、出て来る登場人物もちゃんとズルくて、弱くて、ひと肌です。

1時間5分という尺の中で主要キャラ4名のズルさを描いてくれるのは、とてもとても良い。今まで見て来たVシネの人物造形が割と大味ばっかりだったので、えらいびっくりしてます。

エンディングまで見ると「どんなに小さくても構わないから、身の回りの世界を深く愛そう」という言葉が、胸にすとんと落ちる。

とってもシンプルだけど、難しい人生の課題だよね。きっと誰でも当てはまる。

見終わって、日々の生き方とか人との関わり方をちょっと振り返ってみたくなる良作でした。

見て良かった。

というわけで、ここからはネタバレなどしながら語っていきたいので未見の人は読まないでね。この作品、絶対ネタバレせず見た方がいいやつだから。

ネタバレありゾーン

物語の冒頭。ヒロインの遥が思いっきりずっこける。そのシーンの「何かが始まる予感」めいたものが何度みてもとっても好きだ。
変わらぬ日常と変わらぬ景色の中で主人公の人生を変えてくれる女の子の登場。そこでのきみとさんの説得力・ヒロイン力・瞬発力は秀逸だと思う。

というか、こういう物語の導入ほんと好きだよね、私(笑)

スキップしてきてずっこけるなんて、少女漫画チックでトゥーマッチになりかねないのだけど、そこを2次元寄りにさせずに、それでいて可愛く演じられるのって、多分きみとさん本人の持つバランスが生きてるんだろうなぁ。

遥はガールネクストドア的な雰囲気を纏いつつ、実は他者の人生に強く影響を与える女の子として描かれている。だから、冒頭のニュアンスってとっても私の中で大事でした。

私の捉え方があながち間違っていないと思うのは、朱美が遥を評するこんな言葉。

“ あなた素敵ね。何か人を動かす不思議な魅力を持ってる”

そして何より私がこの作品に大満足しているのは、最後に語られるヒロインの病が全然安っぽく感じられないことです。お涙頂戴だったり「このパターンね」と思わされないのが良い。

多分それは、エンディングが希望のある終わり方になっているからだけではなく、遥の達観した物の見方が少しずつこちら側に沁みてるからなんだと思う。

遥は可哀そうな幸薄の女性としてはまったく描かれていない。それどころかしたたかに逞しく自分の運命と戦っている。

例えばそれは、生活のために英会話の授業料を意図的にぼったくっているところだったり、「僕じゃなくても良かったんですか?」と聡に詰め寄られた時に「出会ったのは君。それじゃダメなの?(それが運命じゃない?)」とあっさり言い返すところだったり。

彼女が自分の病と同時に弱さやズルさや人生観を同時にさらけ出すから、ラストがすとんと胸に落ちる。

2度、3度見ると遥のセリフがより深く、切なく堪能できるので、2回出会うのがおすすめです。

あと、2人の心が英語の宿題で近づいて行くのもなんとも憎い演出でした。答えは間違っているのに、丸をつけるシーンもとてもとてもときめく。細かい演出がいちいち素敵なのです。

そして何よりこの作品を見ると、ヒロインを演じるきみと歩実さんのことが絶対好きになると思う。

きみとさんはとっても笑顔の愛らしい人で、周りにポジティブな影響を与えられる笑顔の持ち主だと思うのだけど、だからこそシリアスなシーンでの表情がとっても映えるし、その緩急にやられる。

遥ちゃんが悲しそうな顔してるだけで、鼻がツーンとして、2回目の鑑賞は早々と号泣でした。

グリーンマイルでも泣かなかった女が……最近涙もろくて困る。

最後に。物語の筋とは全然異なるのですが、実際にお会いするきみとさんはものすごーく綺麗なブラウンアイで瞳の綺麗さにびっくりしました。

たぶん裸眼だと思う。あ、でも的外れだったらごめんなさい。

あと、作品見れば、わかると思うので改めて言うまでもないけど、とてもとても可愛い。どえらい可愛い。
でも、可愛いだけではなくて、男前というか女前なところもあって、そういう地の部分が遥ちゃんの強さに投影されてるんだろうなぁとふと思いました。

おしまい。

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