聴説~Hear Me~

心に残る一本に出会ってしまった。

2009年度台湾興行収入NO1。大阪アジアン映画祭「観客賞」受賞。
この映画に関する前評判はチラホラ耳にしていた。でも、だからこそ「期待せず」に出会いたかった作品。  道端でたまたま出会ってしまった、それぐらい自然に出会いたかった。

出会い方ってなかなか重要ですよね。 それは作品に限らず、人にも。

「もうめちゃくちゃかっこいいよ!まじジャニーズに入れるレベル!」と興奮する友達を目にすると、妙にハードルがあがって、噂のイケメンに思ったほど感動できなかったりなんてことも(苦笑)
「おもしろい!」「凄く良い作品!」そんな前評判を目にして、本来なら感動するはずが、「思ったほどではなかったなー」と思ってしまうことはある意味悲劇だと。

んで「聴説」との出会い方はどうだったろうか?と考えると、最近アイビーちゃんにお熱の私が無心で見られるはずは到底ないわけです(笑) 道端でたまたま見つけたどころか、かわいい子がいると聞きつけて待伏せしてしまっているような状況(笑)不恰好な出会い方であることは間違いない。こういう場合は大抵、悲劇が起こるもんです。(涙)

でも、そんな・・・あそこの角から様子を伺っているがごとき、怪しい私でも・・・・「聴説」は、アイビーちゃんは、しっかり微笑みかえしてくれたのです。 そのまぶしさといったら無い!

2009年(台湾)
監督:チェン・フェンフェン(鄭芬芬)
出演:エディ・ポン(彭于晏)、アイビー・チェン(陳意涵)、ミシェル・チェン(陳妍希)

聴説

あらすじ(導入部)

ある日、天闊(エディ・ポン)はお弁当の配達先で、手話を使って会話をする小朋(ミシェル・チェン)と秧秧(アイビー・チェン)姉妹に出会う。姉の小朋は水泳で デフリンピックを目指すアスリート、そして妹の秧秧は姉の夢を叶えるため献身的に尽くすしっかり者だ。
天闊は秧秧に一目ぼれ。大学時代に習った手話で秧秧との距離を縮めるが、秧秧はお金を稼ぐために映画を見に行く時間すらない。

なんとか彼女と話すため家まで会いに行く天闊だが、秧秧が話すのは姉のことばかり。
自らをなんの取り柄もないと感じている秧秧は、子供の頃から優秀な水泳選手だった姉を誇りに思っていた。しかし、秧秧に惹かれる天闊は君のことが知りたいと気持ちをぶつける・・・・

物語の核心に触れずにさわりだけ、ちょびっとあらすじ書いてみました。 ただ、ガッツリ感想を書くとなると、ガッツリネタバレしなければなりません。以下は確信に触れまくりのネタバレありまくりです。

ネタバレ注意! (最後に「えっ!?」がある映画です。ネタバレ注意)

甘酸っぱい恋愛パートももちろんだけれど、姉妹の微妙なすれ違いと深い愛情がすばらしかった。

アイビーちゃん演じる秧秧は姉の夢を自分の夢と思い、献身的に支える妹。 彼女のスケジュール帳は掛け持ちする仕事のスケジュールでいっぱい。 灰かぶり姫を演じながら、必死に生活をしている。

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満足に食事をする暇も、遊ぶ時間もないけれど、自分を犠牲にしているつもりはない。そこには「取り柄の無い自分」という認識があって、姉がいなくなっては自分など意味がないとすら思っているのかも。 姉と対峙した時の秧秧が時々捨てられることを恐れている子犬みたいで、切なかった。
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秧秧の世界は小朋との生活で完結しているから、姉がいなくては生きていけないんだと思う。

そういった秧秧の心情がわかるのは、小朋が火事に巻き込まれて病院にかけつけるシーン。「秧秧のせいじゃない」とやさしく言う姉に対して、道草をせず自分が帰ればこんなことにならなかった、お姉ちゃんを失うところだったと泣く秧秧。

んで、だいたいこういう場合は優秀に見える姉にどこかしら欠陥があってますます妹が切なく見えたりするんだけど、困ったことに姉の小朋も素敵な女の子。 「あんたのせいで、 デフリンピックを逃したわ!」なんて吼えたりはしないわけです。

とにかく素敵な姉妹。 だからこそ、一生懸命姉を支える妹と、そんな妹の頑張りを少し重荷に感じて、「自分の夢を持ってほしい」と感じる姉のバランスが秀逸。それは女同士の争いではなくて、ただひたすらお互いがお互いを思っているが故のぶつかり合いなんだよね。 このぶつかり合いを言葉ではなく手話と表情で完璧なまでに表現しきっているアイビーちゃんと、ミシェルちゃんに、当然号泣の私でした。 とにかくこの姉妹がすばらしい!

「お姉ちゃんがチャンスを逃したのは自分のせいだ」という妹と、「あなたのせいじゃない、自分を犠牲にしないで」という姉の言い合いが、「生まれ変わっても姉妹になろう」という結びで終わる。 最高のシーンだった。

そしてここで出てくるエピソードも素敵。 子供のころ、お姉ちゃんは自分がいじめられても絶対やり返えさなかったけど、私がいじめられたらやりかえしてくれた、そんなお姉ちゃんが誇りだった(意訳)。
そう、優秀な水泳選手の姉だからじゃなくて、こういうお姉ちゃんだからこそ、支えてきたんだよね(号泣)

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本当にこの二人の演技がすばらしかった。 姉妹愛最高っす。

そして、物語のメインパートはもちろん恋愛パート。 「私なんか」とどこかで思っている秧秧と「お姉ちゃんの話じゃなくて、君のことが聞きたい」というあまりにも可愛い青年のお話なのです。

恋愛パートも可愛かったー。 可愛くて可愛くてどうしようもねーよー。

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はぁ・・・可愛い。

二人のパートはほとんどが手話。 どれぐらい二人が手話を練習したのかわからないけれど、手話に一生懸命になって感情表現が疎かになるようなことは一切なかった。むしろ、表情で最大限伝え合おうとするが故に、より二人の演技力に気づかされる。

聴覚障害を扱ったラブストーリーと聞いて、「愛しているといってくれ」や「オレンジデイズ」のように、障害を乗り越えていく男女のストーリーだと思っていたけれど、 この作品はそういった作品とは根底に流れるものが異なっている。

徹底的に「愛」を扱った作品かも。 -「姉妹愛」「恋愛」「自己愛(自信)」「家族愛」-

耳が聞こえないことで、すれ違ったり、誰かに反対されたり なんていう描写はこの作品では出てこない。 天闊の両親は秧秧が聴覚障害者だと知り、ほんの一瞬戸惑うけれど、「時間を見つけて手話を習おうかな、母ちゃんはしゃべりすぎだから口を休めるのもいいかも」なんて言葉が飛ぶ。それに対して「耳休めになるな(うるさい母ちゃんがだまって)」なんて言っちゃう父ちゃんも愛おしい。

とにかく天闊の両親の息子を思う気持ちがとっても愛しいのです。 だから、初めて秧秧が家に来るときはこれでもかとおめかしをして、手製のメッセージボードまで用意してる。おまけにフライングして「嫁にきてーーー」なんて言っちゃう。

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もうね、このシーンがたまんなかった(号泣)息子への愛情にあふれすぎてる二人。そして秧秧が楽しめるように、一生懸命準備しているのです。 あー、もう本当にこの優しさが沁みる。

こんな母ちゃんと父ちゃんの元に生まれてきたから天闊はあんな可愛い青年なんだろうなー。 説得力大!!!

自分を過小評価している秧秧にとって、ちょこまかしつこく付きまとって「好きだ、好きだ」オーラを出す天闊の出現ってきっと大きなものだったんだろうなー。

そして「オチ」について。 んー最初のシーンで薄々ギミックに気づいてしまった我です。 だってお姉ちゃんにスタートの合図を伝えてたのは秧秧だったから。ファーストコンタクトが手話での会話だったから、お互い聞こえるのに耳が聞こえないと勘違いしていた・・・ということなんだろうね。

この設定を使用すると、2点の凸を踏み出せる。

① ヒロインの背中に聞こえないと思って告白する、でも実は聞こえていた。という描写を生み出せる。
② 誤解が解けるまで全編を通して手話で話していたヒロインが、いきなりしゃべりだすという衝撃を与えられる。

映画として①も②も凄くいいシーンだった。監督の狙いがドンピシャ当たっているといった感じでしょうね。 いきなり天闊が自分の背中に愛の告白をするもんだから、びっくりして固まる秧秧のシーンは、夜のプールというシチュエーションも相まって凄く素敵だったし、唐突にアイビーちゃんがしゃべりだすところは集中力が画面に全部持っていかれる感じだった。

ただ誤解が解ける1シーン前に秧秧は天闊の耳が聞こえるということに気づくわけで・・・、個人的にはあのプールの告白シーンで誤解が解けてもよかったのかなぁと。 でもそれだと、お父ちゃん母ちゃんのボードシーンはなくなるんだけどね。

「実は聞こえてるのに、聞こえないふりをする」という描写に引っかかってしまう人はいるだろうなーと。 背中に告白された段階で、オチを付けていれば「フリ」をする描写もいらなかったと思うのだけれど、そのあたりは作り手さんのさじ加減なので何も言うまい。だって、私はこの作品がめちゃくちゃ好きになっちゃったんだもん。

台湾作品は「人肌」だから好きと、何度か言ってるけれど、改めてこの作品で実感させてもらったなー。 色んな種類の愛がつまったとってもスウィートな作品だった。

そして、私は何よりアイビー・チェンという女優が、演じることに「一生懸命」な人だとわかって、うれし泣きなのです。

彼女の経歴が羅列された文章をみると「運の良い」女優さんという印象を受ける。バラエティー番組で注目されて業界入りしている点もそうだし、キャストの降板によって痞子英雄のヒロインが巡ってきたという点もそう。

でも我要變成硬柿子での彼女の演技が痞子英雄の陳琳役を引き寄せたのではないか? という自分の仮説が立ったこと、そして聴説でのあまりにも誠実な演技を目撃して、アイビーちゃんが他人の船に乗ってきたのではなくて、自分でオールを漕いで、女優道を進んでいるんだという確信に至った。 一生懸命じゃない人が、「陳琳論」をあんなにうれしそうに、そして誇らしそうに語れるわけないもの!

聴説の冒頭部。 主人公が一目ぼれするシーン。 この部分のアイビーちゃんの演技が、若干「可愛い」アクセントが強すぎて、「あ、私の苦手な演技かも」と一瞬思った。だけど、全編通して見るとあのやりすぎかも?と思う動きが重要なキーワドともなる「水鳥」の動きだったのではないか?ということに気づかされる。(勘違いかもしれないwww) そして前半部に強く出ていたアクセントが後半部のシリアスな展開をより際立たせている。 バランスがしっかり成り立っている感じ。 押すだけじゃなくて、引くことも出来る。だから良い塩梅。

今まで「強気な子」を演じるアイビーちゃんばっかり見ていたのだけれど、秧秧のように自分を過小評価している女の子もしっかり自分のものにしていた。

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底力をこれでもかと見せてもらったよ(号泣)

素敵な映画に出会えたことに感謝♪

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  1. posted by ホイメイ

    あらためて、「今観なきゃいつ観る!!」と、思わずにはいられなくなりました。
    アオタさんの鳥肌がたつ位に素敵な文章と、アイビーちゃんの最後のお写真に、もうそれだけで涙。。。。
    「自分を過少評価しちゃってる」という設定のアイビーちゃんを、早く観たい!
    こういう役って・・・・実はとても難しいと思うのです。だって、演じる人によっては嫌味になるわけだし、伝わらないし。
    でも、この最後の涙の表情で、私はアイビーちゃんの女優魂を観ました。うん、彼女は自分でオールを持って、ガンガン漕いでる人です。
    だからこそ、マークやチュンニンちゃんが「アイビーの事が好き過ぎて仕方ない」と、あんなに彼女を慕っているのだと。

    できる事なら・・・・スクリーンで観たかったなーと、多分観終わったら思うんだろうな。
    でも、遅い事はない!いざ観ます!!!!

    それにしても、私は多分、天闊のご両親登場シーンで一番泣くような気がします(T_T)

  2. posted by アオタ

    >ホイメイさんへ
    最近アイビーちゃんにお熱なので、フラットな感想が書けているかどうかは自信がまったくありませんが(笑) またしても「人肌」が感じられる映画に出会えて、ガッツポーズです♪

    >演じる人によっては嫌味になるわけだし、伝わらないし。

    本当にその通りなんですよね!!!!! 「一生懸命」や「献身的」と、コンプレックスのバランスって難しいような気がします。 

    わかりやすく過小評価しているような描写はないのですが、セリフの端々や、お姉ちゃんと対峙したときの捨て犬のような瞳から、じんわりと彼女の密かなコンプレックスが伝わってきて、その「自然」さがとっても印象に残りました。 若干アクセントが強い部分があって「嫌味になる」ことを心配しましたが(汗) 可愛らしいヒロインにしっかり仕上げてくれていましたよ♪ 

    私もスクリーンで見たかったです!!!! なぜ大阪に行かなかったのかorz  自分のスロースターターっぷりに涙です ゚・。(。/□\。)。・゚

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